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2008-05-09 01:47 | カテゴリ:おすすめ漫画
先日、友達と集まって飲む機会があったんですが、その時にお友達のげきくんからいつものようにオススメ漫画を貸してもらいました。

その中で、わたくしの心に強く響いたのが「ヨイコノミライ・完全版」でした。
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これがまあ、相当に衝撃的な内容であったので、今回のエントリーは「ヨイコノミライ・完全版」に関する書評などをつらつらと垂れ流していきたいと思います。

尚、本エントリーは作品の伏線・結末に関するネタバレを含んでおりますので、未見の方はご注意を。

さて、本作の内容を簡単に説明すると、古くは「究極超人あ~る」、最近では「げんしけん」に至るまで、今や一ジャンルとして形成しつつある文化系部活動・サークルを題材とする緩い日常を描写した学園ラブコメ漫画なんですが、特筆すべきは可愛らしい絵柄とは相反したリアルで残酷な描写と、メインの読者であると思われるオタク層に対して真っ向から叩き付けた痛烈なメッセージとも取れる斬新な設定・ストーリー展開でしょう。
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以下、簡単なあらすじです。

漫画に対する熱意だけはあるものの、技術も実績も無い典型的な精神論者の主人公「井之上広海」は、自分が部長を勤める漫研の部員が「既存作品の偏狭な批評」や「キャラ萌え話」に腐心するばかりで全く創作をしない事に苛立ちを覚え、ふとしたきっかけで病弱で学校にほとんど来ない「保健室の姫」と噂される青木杏(あんず)に相談を持ちかける。

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「部員のモチベーション向上には、本格的な同人誌を皆で作ってみてはどうかしら」とアドバイスする杏だったが、実は井之上に対する好意からのアドバイスでは無く、彼女自身の策略の為に計算された言葉だった。

その策略とは、「プロの漫画家であったが、周囲の心無い批評(とも呼べない誹謗中傷)に心を病んで亡くなった母親と、漫画雑誌編集者である父親に強制されて好きでもない漫画を強制的に描き続けさせられる」立場である杏が、「向上心の無いぬるま湯のような閉じたコミュニティの中で、無責任かつ尊大に放言する「何の生産性も無いオタク」を潰すというもので、彼女自身の復讐とも呼べるものであった。


そのターゲットとされる漫研部員の面々も

・高尚で難解な文学的表現に耽溺する潔癖症で男嫌いのリストカット常習者「桂坂詩織」
・オカルトに耽溺する余り妄想と現実の区別が付かない重度のストーカー腐女子「平松かの子」
・主観による無責任な感想」と批評の区別が付かず、他者や作品に対して罵倒しか出来ないエセ批評家「天原強」
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・取り得も存在感も無い無能オタクで、陰では大門夕子に匿名でエロアイコラを送りつけたりする粘着ストーカー「内田直」
・容姿に対するコンプレックスから他者への攻撃性だけ増幅したゴスロリで巨漢の腐女子「有栖川萌絵」
・アイドル声優気取りで媚態を振りまく反面・強烈なナルシシズムと打算的で腹黒い性格を持つ「大門夕子」
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という、オタクのマイナス部分を強調して煮凝りにしたような強烈な面々でして、そんな口先だけで技能の伴わない連中に「売れる同人誌」を作るという井之上の壮大すぎる目標など達成出来るはずもなく、杏の策略通り漫研は徐々に崩壊していきます。それも漫研部員の心も一緒に。
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しかも、紆余曲折の末に完成した同人誌も、漫研の先輩であり売れっ子同人作家である双子の兄弟「衣笠一輝・瞬」兄弟に「お客にお金を頂く出来ではない」と冷徹な批評をされる始末。
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同好の士が集う生ぬるい癒しのコミュニティであった漫研が厳しい商業主義の場に晒された事と、杏の策略によって心の暗部を増幅させていく漫研部員達という、どこまでも救いの無い展開の中で、唯一の救いは逆境をバネとして絵描きとしての才能を開花させていくもの(有栖川萌絵)や、詩織の裏切りによって他者への依存から脱却するもの(大門夕子)、そして困難や確執をを乗り越えて結ばれる井之上・杏、衣笠瞬・詩織たちの姿でした。

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それとは裏腹に、何の成長もしないまま己の殻に閉じこもる者。とりわけ、失恋・親友との決別・自身の才能の限界から、妄想を肥大化させて心の殻に閉じこもってしまった「平松かの子」の「誰もいない教室で妄想を相手に談笑する」シーンで締め括られたラストシーンは、ありがちなハッピーエンドで締め括られる幾多の凡作とは一線を画しております。
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見方によっては「彼女は永遠に誰も傷つけず、誰にも傷つけられない幸せな世界に留まり続けられた」訳でして、この「どちらにも解釈できる」エンディングは藤子・F・不二雄先生のSF短編「流血鬼」「やすらぎの館」「あのバカは荒野を目指す」と被って見えるのはわたくしだけでしょうか。

「現実に向き合い、夢を実現させる為に前向きに進んでいく者たち」
現在は希望に満ちているけれども、その先にはどうしようもなく理不尽な困難が待ち構えているのかも知れません。

「現実に背を向け、努力も進歩も放棄していつまでも己の殻の中に閉じこもる者たち」
一般的に考えれば悲劇的かも知れませんが、「誰にも、何にも邪魔されずに、好きな事だけ見ていられるユートピア」を手に入れたのかも知れません。

痛烈なメッセージ性や題材は人を選ぶかも知れませんが、是非とも読んで欲しい名作です。

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