当時10代の青少年を中心に一大ムーブメントを巻き起こした「ツッパリブーム」なるものがありました。

横浜銀蝿の「ツッパリHIGH SCHOOL ROCK'N ROLL」の大ヒットから「なめ猫」ブームはおろか、当時月曜日〜金曜日の夕方にフジテレビ系列で放送していた大ヒット番組「夕やけニャンニャン」の枠内でも「タイマンテレフォン」「ガンタレ対決」などのヤンキー臭溢れるコーナーがあったほどですから、その影響度は計り知れませんでした。



そしてそんなブームに浮かれた当時の中高生は、ガチの不良でなくとも変形学生服に身を包んだり喫煙や万引き行為を背伸びして行い、体育教師の往復ビンタを食らったりしたものでした。
そういった80年代を筆頭としたツッパリブームは、今思い返すとどいつもこいつも集団催眠にでもかかっていたんじゃないのかと思えるほどにイタいムーブメントではありましたね。
とはいうものの、そんなヤンキームーブメントに全く関わりの無かったボンクラ学生であったわたくしですら、「BE-BOP-HIGHSCHOOL」「湘南爆走族」などの作品に大変入れあげた記憶があります。






そして、そんな不良少年たちの溜まり場として槍玉に挙げられていた当時のゲームセンターは、PTAや警察から目を付けられまくっていた不遇の時代を経ていた訳ですが、1985年位辺りには業界の努力もあってか、そういったレッテル貼りから何とか脱却しつつありました。
ところが、そういった努力を知ってか知らずか1986年にテクノスジャパンより一つの作品がリリースされる事になります。
そのゲームのタイトルは「熱血硬派くにおくん」。

「空手道」(販売はデータイースト)「エキサイティングアワー」「出世大相撲」などなど、メーカー発足の時から格闘ゲームには定評のあった同社でしたが、この「くにおくん」はスポーツとは無縁のガチンコケンカバトル。


ちなみに当時のアーケードゲームはシューティング全盛期でして、1984年には「スターフォース」前年の1985年には「グラディウス」が大ヒットを収めており、正直格闘ゲームの人気は現在ほどではありませんでした。


といいますのも、当時はハードの表現性能やルールの曖昧さのおかげで格闘ゲームというジャンル自体プレイヤーからの反応はイマイチだったように思えます。ちなみに「くにおくん」はタイトー系列のゲームセンターに多くリリースされた事もあり、ナムコ系列のゲームセンターには設置されにくかった事も理由の一つだったのかなあと推察するのですが。
そんなスペースファンタジーシューティング全盛期にリリースされた「くにおくん」のゲーム画面はどんなものだったのかと言いますと…

余りに生々しく異質なものでありました。
その強烈なインパクトに魅せられたプレイヤーは、好奇心も手伝ってプレイしてみたところ…敵キャラクターの挙動のリアルさに驚愕する破目になります。
プレイヤー「くにおくん」のパンチを紙一重でスウェーする、ジャンプキックはしゃがみで回避する、ダッシュで逃げると猛然と追いかけてくる、隙あらば挟み撃ち・羽交い絞めを仕掛けてくるといった挙動は、例えるならば全ての敵キャラクターが「魔界村」のレッドアリーマーになっているかのような錯覚を覚えるほどでした。


ちなみに最終ステージのザコはドス所持・ボスの「さぶ」に至っては拳銃所持でして、攻撃を食らうと残ライフがいくらあろうとも即死。古今東西のベルトスクロールアクションの中でもザコの攻撃で即死するというのは余りにも前代未聞過ぎました。


おまけにデフォルト設定でくにおくんの残人数はゼロ。(スコア三万点で一回エクステンドするのみ)当時も今も一般的にプレイヤーの残機は3つというのがデフォルトでしたが、おかげでただでさえ高い難易度に拍車をかけてくれやがりました。
とどめに「待てこの野郎!」「なめんなよ、この野郎!」「ざけんじゃねえ!」「ウオーッ!」といった当時としては画期的だったサンプリングボイスもふんだんに用意されており、当時ギャラリーとして見ていたわたくしも「このゲームは怖い」「プレイするだけで絡まれそうだ」という恐怖感に苛まれたものです。
…と、ここまで読まれた方は「え?アーケード版のくにおくんってクソゲーなの?」という疑問を抱かれたと思います。
とんでもない。
個人的にテクノス格闘ゲームの中でも個人的に最高峰に君臨するゲームなのでした。
極めて人間臭い挙動を示す敵の挙動や左攻撃・ジャンプ・右攻撃という変則的なボタン配置も「くにおくんは自分に一番近い敵の方向を向く」という法則性さえ掴んでしまえば、何も怖くはありません。
正面にいる敵は斜め45度から近付いて往復パンチ、後ろに近付いて来た敵は逆方向のボタン一発でリーチ・スピード・パワー全てを兼ね備えた後ろ回し蹴り一閃。



腹を押さえて悶絶した敵は掴んで膝蹴り・背負い投げ・倒れた敵にはマウントを取ってフルボッコなど思いのままに料理出来るという「上達すれば豊富な技を駆使して思いのままに立ち回れる」という事に気付いたプレイヤー達は、その練り込まれたゲーム性に心酔する事となります。

▲参考までに。…腕が落ちたなあ…
Wikiによりますと、本作の開発工数は3〜4ヶ月という事らしいのですが、こんな短い工数でよくもまあここまで完成されたゲームを開発出来たもんだなあと驚愕するばかりであります。
その結果、リリース当初はキワモノ扱いをされていた本作は、その完成されたゲーム性ゆえに大ヒットを収めて「格闘ゲームならテクノス」という一大ブランドを築き、本作で一躍有名になった「くにおくん」はファミコンへ舞台を変えて大活躍する事となりました。

今ではファミコン版の健全な「くにおくん」しか知らない人が多数だと思いますが、あのリアルで生々しい不良の「くにおくん」を今の技術でもう一度拝みたいものですね。
さて、最後になりますが、この「くにおくん」も「ロードブラスター」「サンダーストーム」「ダブルドラゴン」等の名作ゲームを多々輩出した岸本良久さんが開発されたゲームなんですが、機会があればあの練り込まれたゲーム性の秘訣なんかを聞いてみたいなあ、なんて思っております。
…いえ、決してあの生々しいケンカ技の数々の由来や生々しいサンプリングボイスの持ち主が聞きたい訳ではありませんので。

▲参考画像:やんちゃだった頃の岸本さん


